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今回はFOBSのサヴァラン オランジュについて、掘り下げていきたいと思います。

 

<サヴァランとは?>

伝統菓子のサヴァランと言うと、発酵させた生地をサヴァラン型と呼ばれる型で焼き上げ、お酒のたっぷり入ったシロップを浸み込ませたお菓子です。お酒はラム酒を使うことが多く、たっぷりのクレームシャンティ(ホイップクリーム)を飾ったりします。スプーンを入れた時に「ジュワ~!」と生地からシロップが出てきて、食感も独特、さらにパンチの効いた酒の香りと深い味わいは、シンプルだけどものすごく大人で贅沢なお菓子です。

しかし、お酒が効いているお菓子というと敬遠する方も多いのではないでしょうか。むしろお酒が苦手でサヴァラン自体を食べたことがない方もいるのではでしょうか。

FOBSでサヴァランを作ろうとなったとき、強いお酒が苦手な方でも食べることができて、でもサヴァランの基本的な部分はしっかりと、そして現代に合うスタイルでオリジナル感を出したいなと思っていました。

そこでFOBSのサヴァランは、ラム酒ではなく、オレンジ風味のグランマルニエを使い、飾りのクリームはオレンジと相性の良いビターなチョコレートのシャンティ。そして、グランマルニエはお好みの量を調節して入れられるよう、スポイトに入れる形にしました。

 

<サヴァランの生地>

まずは生地作りから。主役のサヴァランの生地は、「パータ・ババ」と呼ばれる生地です。イメージで言うと、ブリオッシュのようにバターが多めに配合されています。

この生地を一次発酵させて休ませ、丸めて、サヴァラン型にひとつひとつ詰めていきます。そして二次発酵させます。

二次発酵させると、生地がツヤっとしてハリが出て、ぷっくら膨らんでいます。

二次発酵させた生地

 

そしてオーブンに入れると・・・

型の4倍くらいに高く膨らみます。いいですね~!良い仕込みが出来た証拠でもあるので、作り手としてはこれを見るとテンション上がります。

良い生地だとバターや卵の風味が良く、歯切れもよくて、この後のシロップを染み込ませる工程で、ぐんぐんシロップを吸い込んでいきます。

焼きあがったサヴァラン

 

<秘伝?! のシロップ>

サヴァランの生地に染み込ませるのはオレンジのシロップです。オレンジだけではなく、バニラやアニスを入れて、「秘伝」と言いたくなってしまうようなエキゾチックな独特の香りと爽やかで奥行のある余韻が広がります。

 

サヴァランの秘伝のシロップ。

焼きあがったサヴァランをひとつひとつヴェリーヌグラスに入れて、温かい秘伝のシロップを注ぎ、しっかりと浸み込ませます。

シロップを入れた直後

シロップが完全に染み込んだサヴァラン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここからは層を重ねていきます。

<オレンジのマーマレード>

シロップを染み込ませた生地の上には、オレンジのマーマレード。真ん中には、オレンジのフレッシュさと香りを出す為にオレンジの果肉を入れています。

オレンジを凝縮させたマーマレードにフレッシュさと香りの果肉を。

果汁で皮を煮るマーマレード。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マーマレードはオレンジの果汁で皮を煮ていきますが、みずみずしさも感じるように糖度を上げすぎず程よく火を止めています。

 

<サヴァラン全体をまとめるクレームパティシエールレジェ>

マーマレードの上にはクレームパティシエールレジェです。

クレームパティシエール=「カスタードクリーム」、レジェ=「軽い」という意味で、生クリームを合わせたカスタードクリームのことです。クレームディプロマットとも呼ばれますね。

このクレームパティシエールレジェは、さまざまな生菓子に使える便利なクリームで、FOBSではサヴァランだけではなく、シューやタルトにも使っています。しかし、それぞれの菓子に合わせて工夫があります。

FOBSのシューに使うクレームパティシエールレジェは、主役のクリームです。クレームパティシエールと固めにホイップした生クリームを敢えてざっくりと粗く合わせています。頬張った際に、クリームに「ほくっ」とした食感と、もぐもぐ食べる食べ応えが生まれます。シューの中にたっぷりとクリームが入っていますが、粗く合わせることで、口の中で程よくクレームパティシエールの多い部分、生クリームの多い部分がその都度あることでメリハリが付き、くどさを感じたり食べ飽きたりすることがなく完食できます。

一方FOBSのサヴァランに使うクレームパティシエールレジェは、脇役のクリームです。クレームパティシエールとホイップした生クリームを完全に混ぜ合わせることで、クリーミーで滑らかな口当たりになり、サヴァランオランジュ全体を食べたときの一体感、調和を生み出します。

シューのクレームパティシエールレジェ

サヴァランオランジュのクレームパティシエールレジェ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このように同じ配合で作ったクリームも、混ぜ方ひとつで全く違うクリームになり、それぞれのお菓子によって、使い分けます。

 

<シャンティグアナラ>

オレンジと相性抜群のビターチョコレートのシャンティ。チョコレートはカカオ分70%のヴァローナのグアナラを使ってキレのある大人の味のガナッシュを作ります。チョコレートの油分と生クリームの水分という通常は混ざり合わないものを、均一に混ぜ合わせるという作業をすることで、ガナッシュができます。しっかりと乳化したガナッシュを更に生クリームと合わせてやわらかくホイップして、くちどけ良く滑らかなシャンティショコラに仕上げます。

 

<デコレーション>

オレンジの皮を千切りにしてシロップで煮て糖度を上げたものをトップに。ココアを軽く振って、グランマルニエエクストラクトを入れたスポイトを挿します。

グランマルニエエクストラクトは、甘みのあるリキュールのグランマルニエコルドンルージュの風味を凝縮させて無糖のスピリッツに仕上げたお酒なので、秘伝のシロップがたっぷり染み込んだサヴァラン生地にギューッと入れると更にふわーっと香りが広がり、キリッとしたアルコール感がたまらなく美味しいです。数滴シャンティショコラの上にかけても◎

強いお酒が苦手でも少しなら大丈夫という方でしたら、このグランマルニエをお好みの量を調節して入れてください。ほんの1~2滴入れるだけでも、断然美味しさが違います。サヴァランというだけあって、お酒を入れることで完成するお菓子です!

さあ、スプーンを差して下から上に持ち上げて、FOBSのサヴァランオランジュをどうぞお召し上がりください!